研 究 報 告 書

報告書名:

工業技術研究報告書
 

報告書番号:

No.42
 

報告書年度:

2013
 

研究種別:

創造的研究推進費研究課題
 

テーマ名:

汎用クロム系ステンレス鋼の窒素吸収処理に関する研究
 

副 題:


 

担当者:

中越技術支援センター  三浦 一真
研究開発センター  林 成実
 

抄 録:

特殊な添加元素を含まない汎用ステンレス鋼のひとつであるFe-16〜18mass%Cr(以後、Fe-16Cr)の窒素吸収処理に関する研究を行った。素材を窒素雰囲気・高温で処理することで,窒素(N)を添加する。Fe-16mass%Cr にN を添加すると表面部から窒素が吸収されて相変態し,硬い窒素吸収層(改質層)を形成する。この層の厚さは処理温度・時間と相関がある。この層をX 線回折により解析したところ,オーステナイト相とマルテンサイト相の2 相から成り,窒素含有率は0.6wt%前後であった。
塩化第二鉄腐食試験を実施したところ,耐食性はオーステナイト系ステンレス鋼であるFe-18Cr-8Niに匹敵することを確認した。
 

緒 言:

ステンレス鋼は耐食性を向上させる目的でクロム(Cr)又はCrとニッケル(Ni)を合金させた合金鋼で,一般にはCr含有量が約11mass%(以後mass%を省略)以上の鋼をいい,主としてその組織によって,マルテンサイト系,フェライト系,オーステナイト系,オーステナイト・フェライト系(二相ステンレス)および析出硬化系の五つに分類される。
鉄(Fe) 以外はCr が必須合金元素でJIS において100種類程度のステンレス鋼種が規定されている。ステンレス鋼は厨房器具・台所用品・ガス・石油器具などに代表される家庭用,ビルの内外装パネル・サッシ類や大規模展示場・空港の屋根等の建材,一般機械,産業機械,化学・食品プラント,車両・自動車の排気系・エンジン部品などの輸送機器,電気機器など多方面の分野で用いられ,先端分野,腐食環境製品を中心に要求される特性が厳しくなっている1)。
ステンレス鋼は従来からオーステナイト系を中心に希少金属であるNi,モリブデン(Mo)を含んだ鋼種が多く存在する。さらに,最近では耐食性,加工性,溶接性などの改善を目的にCrの含有量を高めたり,ニオブ(Nb),チタン(Ti)をはじめとする希少金属を微量添加した鋼種が数多く開発されている。ところが,これらの希少金属は耐用年数の短いものが多く,産出地域が偏在化しており,価格も変動しやすい。ステンレス鋼は2006〜2007年にかけて,Niの高騰によるオーステナイト系の価格上昇と鋼材不足を招き,代替鋼種として,18Cr以上の高Cr系のフェライト系ステンレス鋼が数種開発された2)。
このような状況のもと,我々は高Cr のフェライト系ステンレス鋼に窒素吸収することにより,オーステナイト化することで耐食性をはじめとする優れた特性が得られることに着目し,当初Fe-24Cr-2Mo(研究開発材)の素材に窒素を1%強吸収させてオーステナイト相へ変態させ,既存のオーステナイト系ステンレス鋼と同等以上の特性を有するNi を含まないNi フリーステンレス鋼の研究開発を行ってきた3)、4)。
さらに,誘導加熱と真空ガス置換による窒素吸収処理技術を開発し,Fe-24Cr-2Mo の類似組成で市場に流通している素材であるSUS445J1相当鋼種の窒素吸収処理ステンレス鋼の開発に成功し,数例の製品試作を行うとともに,事業展開を図っているところである5)。
本研究では,流通量が多く,価格も安定な汎用ステンレス鋼の付加価値を高めることを目的に汎用鋼種への窒素吸収処理を試み,その適用可能性について,昨年度より基礎研究を開始し,マルテンサイト系ステンレス鋼であるFe-13Cr-0.3C については実用化の目途をつけた6)。フェライト系ステンレス鋼Fe-16Cr については継続研究中である。目標は窒素吸収処理による完全オーステナイト化であるが、現状では完全オーステナイト化を得ることは難しく,短時間処理により表面に薄い窒素処理層を施す研究を併用して行っている。
本報告では現在までに得られている研究結果と実用化へ向けての課題について述べる。
 

資 料:

7_H24報告書(論文4).pdf(約707.04 Kバイト)