研 究 報 告 書

報告書名:

工業技術研究報告書
 

報告書番号:

No.31
 

報告書年度:

2002
 

研究種別:

提案公募型技術開発研究
 

テーマ名:

環境調和型薄膜太陽電池の電気的特性に関する研究
 

副 題:


 

担当者:

片桐 裕則(長岡工業高等専門学校)
 

抄 録:

環境調和型薄膜太陽電池の開発を目指し,Cu 2 ZnSnS 4(以下CZTS)薄膜を光吸収層とする薄膜太陽電池を作製し各種評価を行った。作製した太陽電は,Al/ZnO:Al/CdS/CZTS/Mo/ガラス構造である。厚さ1.2mmのソーダライムガラスを基板とし,RFスパッタ法により下部電極Moを製膜した。Mo上に,光吸収層CZTS薄膜をE-B蒸着・
気相硫化法により積層した。バッファー層CdSは,溶液成長法(CBD法)で成長させた。上部窓層ZnO:Alは,ZnO+Al 2 O 3 :2.0wt%ターゲットを用い,RFスパッタ法により積層した。最後に上部櫛形Al電極を真空蒸着法により作製し,太陽電池を構成した。本研究で得られた最高変換効率は4.13%であった。この値は,これまでのトップデータ2.62%を大きく上回る値である。
 

緒 言:

現在,太陽電池の主流はSi結晶型であるが,製造コストの高さから,一般的普及には至っていない。製造コスト削減のためには,太陽電池の薄膜化が重要な課題となっている商用電源との競合を目指す次世代薄膜太陽電池の開発は,CuIn x Ga 1-x Se 2 (以下CIGS)系薄膜を中心として,各国の研究機関で精力的に展開されている。既に,小面積セルにおいては18%の変換効率が達成されている。しかし,CIGS系薄膜は,稀少元素In・Gaや有毒性元素Seを構成元素としている。従って,将来の大量生産段階における資源上の制約,リサイクル時・廃棄時における地球環境に与える影響が懸念される。
 本研究室で開発しているCu 2 ZnSnS 4 (以下CZTS)は,CuInSe 2 (以下CIS)における稀少元素InをZn,Snで,有毒性元素SeをSで置換したケステライト構造を持つ化合物半導体である。本材料の禁制帯幅は1.4〜1.6eVと推定され,太陽電池光吸収層の最適値に極めて近い値である。さらに,光吸収係数は10 4 cm-1台で,CISに匹敵するほどの大きな値を示す1 -5)。これらの光学的特性は,本材料が薄膜太陽電池光吸収層として極めて有望であることを示している。CZTSのケステライト構造は,CISのカルコパイライト構造に極めて近似した構造である。そのため,CZTS系薄膜太陽電池を作製する際には,研究・開発が進んでいるCIS系薄膜太陽電池の周辺技術がそのまま応用できる可能性が極めて高い。
さらに,CZTSは稀少元素を含まないため,CISに比べ原材料費が安価である。化学量論比的には,In:2モルをZn,Sn:各1モル(計2モル)で置換することになり,この部分での原材料費は約1/4で済むという試算が成立する。これらの特徴は,CZTS系薄膜太陽電池の実用化に向けての大きなメリットである。
 信州大学・伊東教授らは,原子ビームスパッタ法によるCZTS薄膜の作製に成功し,CTO導電膜とのヘテロ接合による光起電力効果を,世界で初めて報告している1)。また,Stuttgart大学Friedlmeierらは同時蒸着法による作製に成功し,ZnO/CdS窓層との積層構造で2.3%の変換効率を報告している3)。
 本研究室では,気相硫化法によるCZTS薄膜の作製を提案している2,4-8 ) 。これまでに,高基板温度蒸着・気相硫化法によるCZTS薄膜を用いたAl/ZnO:Al/CdS /CZTS/Mo/ソーダライムガラス(以下SLG)構造の太陽電池で,変換効率2.62%,開放電圧522mVを得ている。しかし,曲線因子(以下FF)の値が35.54%と低く,更なる高効率化のためには直列抵抗成分の低減化が重要な課題となっていた。そこで,上部窓層材料ZnO:Al薄膜の低抵抗率化・高透過率化に関する研究を実施し,10 -4Ωcm台と充分に低い抵抗率と90%以上の高い透過率を同時に達成することに成功した。しかし,このように最適化されたZnO:Al薄膜を従来のCZTS薄膜(膜厚:約2μm)に積層しても,太陽電池特性に大きな改善は確認できなかった。これは,光吸収層CZTS薄膜作製条件の最適化が不十分で,光吸収層自体の直列抵抗成分が高すぎたことに原因があると考えられる。また,CZTS薄膜の作製報告例が非常に少ないことから,作製手法・作製条件と基本的物性,特に電気的特性との関連を明らかにする必要がある。
 そこで本研究では,
@CZTS薄膜作製条件の最適化
AC-V測定システムの構築および拡散電位の測定
B磁場可変型ACホール効果測定システムの構築
の三項目について調査・研究を行ったので報告する。
 

資 料:

提案5−薄膜太陽電池.PDF(約390.40 Kバイト)