研 究 報 告 書

報告書名:

工業技術研究報告書
 

報告書番号:

No.39
 

報告書年度:

2010
 

研究種別:

競争型受託研究
 

テーマ名:

超音波キャビテーションを利用した軽合金材料表面への圧縮残留応力付与技術の開発
 

副 題:


 

担当者:

(研究開発センター)中川 昌幸、白川 正登、本田 崇
 

抄 録:

ステップ型ホーンにより増幅された超音波振動により,水中でキャビテーションを発生させ,その周期的な崩壊圧で金属表面をピーニングする効果により表面に圧縮残留応力を付与できる。本研究では,従来の円筒ステップ型ホーンよりも大型のバー型超音波ホーンを開発し,適切な速度で走査させることにより広い面積に対してピーニングを適用する技術を開発した。A5052圧延板表面200×180mmに対し,超音波加工ヘッドを180mm/minで走査することにより,表面粗さをほとんど変化させることなく均一に-100MPa程度の圧縮残留応力を付与することができた。
 

緒 言:

金属材料表面にショットピーニングに代表される表面塑性加工プロセスを施すことにより,圧縮残留応力が付与されることは良く知られている。材料表面に付与される圧縮残留応力は,疲労強度の向上やSUS304などにおける応力腐食割れ対策,溶接引張残留応力の低減など,さまざまな効果が期待されるため,工業的にも自動車部品などさまざまな対象にピーニングが適用されている。これらの方法では,ショットと表面という固体同士の衝突によるディンプル形成は避けられず,深部まで圧縮残留応力を付与できる反面,表面粗さの増大,最表面のダメージ層形成を引き起こすため,その効果を半減させてしまうという問題点がある。この対策として,ひとつにはWPC(微粒子ピーニング)のようにショットを微粒子化することが考えられるが,本研究では超音波振動により発生させるキャビテーションを利用する方法を提案する。
過去の研究において,キャビテーションの気泡はその崩壊時には,マイクロジェットにより非常に激しい衝撃圧が発生し,最大で数GPa程度という大きな値を示すことは,数値解析だけでなく,測定値としてもいくつもの研究結果が示されており1),妥当な主張であると考えられる。そのような大きな衝撃圧は金属材料を塑性変形させるには十分に強力であり,キャビテーションを適切にコントロールすることによってピーニングプロセスとして利用できると考えられる。
東北大の祖山教授はキャビテーションによるピーニングを検討し,キャビテーション・ショットレス・ピーニング(以下CSP)と名づけ,多くの研究成果を示している。特に,アルミ合金鋳物に対して,CSPではショットピーニングよりも圧縮残留応力深さが小さいものの,表面へのダメージが少ないために,結果として疲労強度が向上するという結果2)は,前述のとおり,付与できる残留応力深さが小さくても,表面ダメージが少ないことにより,ショット ピーニングとの置き換えも可能なケースがあることを示唆している。
本研究においては,超音波振動を利用してキャビテーションを発生させる。水中における超音波でキャビテーションが発生することは工業洗浄の分野で良く知られている。
本研究では,より効率的な処理のためキャビテーション発生領域となる振動ホーン先端面を大きく設計することを検討し,さらに実用性を高めるため,走査させることによって効率的な広い面積へのピーニングを検討した。
 

資 料:

04H21超音波キャビテーション.pdf(約567.56 Kバイト)